僕個人的に人材業界に属して11年が経過しました。
・エージェント(人材紹介会社)として9年間
・ベンチャー特化の採用コンサルタントとして2年間
この経験を積みました。ここ11年間の人材業界はトレンドの移り変わりがかなり激しかったんですよね。人材業界は離職率が高いため、新卒から33歳まで経験を積んでいる方って意外と少ないのです。
人材業界経験が5年未満の方は是非下記を確認した上で、人材業界で仕事をしていっていただきたいです。少し詳しく書いてみたいと思います。
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◆2008〜2009年 地獄のリーマンショック時代
人材業界に属していない方も聞いたことがあるかと思いますが、「リーマンショック」が2008年から2009年あたりに発生しました。簡単に言うと直近10年間で日本が最も景気が悪くなった時期です。
どれくらい悪いかと言うと、
・採用ニーズは今の1/5程度(体感値)
・既存顧客へ採用ニーズを確認すると、ほぼ採用クローズ
・エージェント各社が前年と比較して売上50%ダウンは普通
・求職者の集客はすごく好調。ただご紹介先(企業)がとにかくない。
・紹介料は25%でギリギリ。35%で強気にいくのは無理
こんな感じの時期でした。
僕は2008年新卒でしたので、この時期から仕事を始めたのですが、「こんなにも社会は厳しいのか」と欠乏感を味わった時期でもありました。テレアポは本当にきつかったですね。アポ率3〜5%くらいは保っていましたが、問い合わせなんてほとんどきません。とにかくアタックするしかない。人事もアポに後ろ向きな方ばかりでした。
◆2010年 ソーシャルゲームってなんだ?の時期
このくらいの時期から人材業界が復興し始めます。復興のキッカケとなったのは「ソーシャルゲーム」であることは間違いありません。
今でも覚えているのですが、六本木にあるソーシャルゲーム系企業(SAP)からこんなメールが届きました。
「ソーシャルゲーム事業に参入するにあたり、サーバーサイドエンジニアの採用を強化します。ご紹介決定については、紹介料(フィー)を100%にいたしますので、是非ご紹介よろしくお願い致します。」
ん?紹介料100%って誤字?これ誤字だと企業が気づかずにご紹介をして入社決定してしまったら大変なことになるぞ。電話して教えてあげよう。
「すみません、紹介料が100%って書いてあります。誤字ですよね」
「いえ、100%です。是非ご紹介よろしくお願い致します。」
ふむ。え?100%ってあり得ないでしょ。なぜ?
「ソーシャルゲームは間違いなく巨大産業になります。今の時期にシェアを獲得してしまいたいのです。なので投資です」
「そうですか。わかりました、一生懸命ご紹介します!」
フィーってリーマンショックの影響で25%と言われることが多かったのですが、当時100%と言われた時の衝撃はまだ覚えています。
このくらいの時期からですね、「サーバーサイドエンジニア」という職種が出てきたのは。それまでは「Web系エンジニア」って言われていて、フロントエンドエンジニアという概念は無かったんですよね。
話を戻して、この時期に採用ニーズがものすごく強いなと思っていたのは、CROOZ、KLab、gloopsあたりでした。本当にすごい勢いでした。年間100名採用はザラにありましたし、1ヶ月で20名入社をしました、なんていう時期もありました。
ここで成長をした人材紹介会社は一気に伸びていきましたね。
◆2011年 ソーシャルゲーム絶頂期1年目
この時期あたりからIT/ネット/ゲーム領域のエージェントは売上が爆伸びしているかと思います。
前述した通り、フィーを100%にする採用企業も増えてきており、そしてこの時期からグリー、DeNA(Mobage)が採用活動に最注力し始めます。そしてCygamesもギアを上げて採用活動を開始していました。Web業界の企業がゲーム領域にどんどん参入したこともトピックスでしたね。gumi、enishとか。
面接1回は当たり前で、
「え、30分の面接で内定が出るのですか?」
といえこともたくさんありました。採用市場においては人材の採り合いが始まり、「戦争」と表現をした方が良いくらい激しい時期ではありました。特にライバル関係にある企業で両社内定が出た場合は、今の非にならないくらい企業がかなり前のめりでしたね。前のめりというか、内定辞退をされると企業からかなりお叱りをいただいていました。それくらい採用に本気だった時期ですね。
◆2012年 ソーシャルゲーム絶頂期2年目
業界は好調を維持しており、とにかく内定ラッシュ。各社市場シェアを上げたいので抗争がすごかったです。
このくらいの時期から、コナミ、バンナムあたりがソーシャルゲームに本格参入してきており、そしてスクエニ、カプコン、セガあたりはソーシャルゲームになかなか参入してこなかったです。詳細な理由は割愛しますが、当時ソーシャルゲームは「ポチポチゲーム」とも言われており、操作性は乏しく、画面をポチポチ押していればゲームが進むスタイルがお気に召さなかったのかもしれません。
当時流行っていたドリランド、怪盗ロワイアルは月商50億円?なんて噂を聞いたこともあります。ちなみに、今採用ニーズが高いWeb業界はもちろん募集はしていましたが、明らかにソーシャルゲーム業界に主役の座は奪われていたイメージです。Web業界の優秀な方はゲーム業界に転職し始めてました。
この時期伸びた日本のWebサービスはほぼ無いのではないかなと。LINEがあるか。
海外に目を向けると、この時期にFacebookの活用が世界的に伸びた印象。日本でも使用人口が増え、Facebookメッセンジャーで仕事のやり取りをすることも増えていきましたよね。
◆2013年 大手SNSプラットフォーム200名希望退職時期
好景気は長く続かないですよね。2010年から産声を上げていたソーシャルゲーム業界に暗雲が立ちこめます。日本で2大SNSプラットフォームと言われていたうちの1社が200名の希望退職を発表したのです。詳細な理由は割愛しますが、これは業界は激震でした。
ただ、律儀に事業運営をしている企業は影響はそこまでなく、業界のトッププレーヤーが崩れてしまった形。
しかし、
「ゲーム業界は不安定なので転職したくないです」
という意見が出始めたのはこの時期くらいです。僕個人的にはソーシャルゲーム業界は日本が世界に対して戦える業界の一つだと思っていました。ただ、この一件で業界成長が鈍化してしまったのです。
◆2014年 Web業界に勢いが出てきた時期
採用市場において主役を明け渡してしまっていたWeb業界がこのくらいの時期から勢いが出始めます。
カカクコム、ぐるなび、DMMなどの老舗Web系企業が採用ニーズを高めてきており、
クラウドワークス、ランサーズなどの新しい業態のWebベンチャーが出てきていた時期でした。
個人的に印象的だったのは、前年のソーシャルゲームの一件により、求職者が「お金<やりがい」を求め始めたことです。ソーシャルゲーム業界は年収が高くて有名であり、正直それに魅力を感じて業界に入ってくる方も多かったです。
ただ、
「お金ではなくやりがいを優先したい」
という方が増えてきており、
例えば、
・教育が好きだから、education tech系の企業に転職したい
・ゲーム以外のアプリ運営企業に転職したい
という方が増えてました。
このあたりから、採用活動をする上で「理念、ビジョン」を打ち出す手法が増えていった印象があります。
・なぜ、この事業に取り組むのか?
・その理念、ビジョンになった社長の原体験は何なのか?
などが語れる企業が採用市場において選ばれ始めていた時期でした。
◆2015年 Webベンチャー発起時期
このくらいの時期からWebベンチャーにスポットが当たるようになってきました。メルカリ、Gunosy、スマートニュースなど当時30億円を超える資金調達を実施して有名になる企業もいましたね。
それ以外にもメドピア、ピクスタなど資金調達はたくさんしていませんが、成長をしているベンチャーも注目をされ始めていました。
ただ、Weeベンチャーはソーシャルゲーム企業よりも採用ニーズが高いため、人材企業にとっては苦戦が強いられた時期でもありましたね。
◆2016年 ゲーム/Web企業の採用が一定化し、SIが元気な時代に
ソーシャルゲーム時代も終え、Web系企業の採用もやや落ち着いてきた2016年。そして、このくらいの時期からWantedlyやリファラル採用が流行り始めます。
Wantedly(媒体)やリファラル採用は採用単価が低いため、エージェント離れ初年度が2016年くらいからでした。
ただ、SIについては人材会社をフル活用をした採用手法であり、人材会社にとってはWebベンチャーやゲーム企業に注力するよりはSIに注力した方が良いという風潮もあり、2016年はSI全盛期と呼べるでしょう。
◆2017〜2018年 ゲーム、Web大手、SIいずれも好調時代
そろそろ有効求人倍率も下がり始めるかな?という時期でしたが依然として採用ニーズは高騰したまま。人材会社にとっては良い状況が続いています。
ただ、人材会社にとって注力すべき業界はある程度絞れたのではないでしょうか?
ハマる業界:ゲーム、SI、Web大手
ハマらない業界:Webベンチャー、IoTなど先進的な業界
こんな感じだと思います。
上記の理由は前述した通り、Wantedly(媒体)とリファラル採用が全盛期に入ったからです。
さて、2019年 どうなるのでしょうか…?
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みなさん、いかがでしたでしょか?
昔から人材業界にいらっしゃる方は懐かしいでしょうし、20代後半くらいの方はリーマンショックの恐ろしさをご存知ではないでしょうし、新卒3年目未満の方は、真新しい情報ばかりなのではないかなと思います。
当社ポテンシャライトは採用コンサルティング事業とエージェント事業を行なっています。
採用企業側で感じることもありますし、人材会社側で感じることもあります。
人材会社の中では最も市場感を肌で感じることができるポジションで仕事をしている自覚を持っています。
ですので、こういったアウトプットは頻繁に行っていければと思っていますので、長文でしたがまた読んでいただければ幸いです。
※ポテンシャライト代表の山根はTwitterでも情報発信をしております。
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