紹介会社の特色を考慮し、「マネジメント手法」を変える
人材紹介会社の求人に関する基本の理解と準備ができたところで、次はどのように紹介会社を活用していくかを考えてみましょう。
皆さんが依頼をしている紹介会社の中にも特色は様々あります。ここでは大きく3つの系統に分類して考えてみます。
a) 紹介数は多いがマッチング率が低い紹介会社
b) 紹介数は少ないがマッチング率が高い紹介会社
c) 転職潜在層を「提案」ベースで紹介頂ける紹介会社
どのような事業方針で行っている紹介会社なのかは、比較サイトを閲覧してみたり、初回の打ち合わせ時に紹介実績や提案の仕方などを直接尋ねてみたりして、実際に求人を依頼する前に確認してみることが大事です。
a) 紹介数は多いがマッチング率が低い紹介会社
まず、a) の企業に対して「マッチング精度を上げてください!」と言っても効果が出ないことも多いです。
この系統の紹介会社はそういった方針で事業運営しているので、先ほどの言葉を言い換えると、「御社の事業方針を変えてください!」と言っているのと同意です。ただ、人事としては、「応募数」が物凄く大事なKPIであることには違いありません。個人的な見解になりますがa) は外せないと思っています。
そこで、a)の紹介会社を利用する際は、書類選考通過率が低くても我慢して、ダイヤの原石を見つけるという想いを持って、人事側で1次スクリーニングをかけてください。10人に1人など低い確率かもしれませんが、必ずマッチングする人材の紹介があります。つまり、他の紹介会社とは人事側のマネジメントを変えてみることをお勧めします。
b) 紹介数は少ないがマッチング率が高い紹介会社
次に、b) の企業に対してですが、選考不合格になった場合は丁寧にフィードバックをするのが良いでしょう。おそらく1人の求職者に対して提案をしている求人は5件程度。その5件に選ばれて紹介していただいているので、「スキル不足でお見送りです」の一言だと、その紹介会社も困ってしまうでしょう。
書類選考官が人事部ではなく現場の方であれば、紹介会社別に書類選考で不合格とした理由を、「A分野の実践スキルはあるものの、弊社の業務遂行に必要なB分野の基礎スキルがないため不合格とさせていただきました」というように、長短をつけて伝えると良いでしょう。逆にa)の企業はそこまでお見送り理由を重要視していないので、その対応をする必要はありません。
c) 転職潜在層を「提案」ベースで紹介頂ける紹介会社
最後にc) の場合ですが面接官or人事に少しでも余裕があるのであれば、選考を前提とした「面接」ではなく、積極的に顔合わせや情報交換を主とした「面談ベース」で会うことが良いでしょう。昨今、転職市場が盛り上がりを見せている中、求職者は「現職よりも魅力的な企業があるのであれば転職をしたい」という方が全体の半数程度を占めています。しかし、求職者側がその情報を確認できる機会は意外と少ないのです。
やや一方的に求職者の限られた情報を見て判断してしまう「面接」ではなく、求職者と採用企業が互いにリラックスしてコミュニケーションをとれるような「面談ベース」がきっかけとなり、採用に結びつくケースが特にIT業界などでは増えています。できうる限り、積極的に会ってみましょう。
人事に必要な能力は3つ
多種多様な角度からお話をさせていただきましたが、人事が紹介会社を利用して採用活動を行う上で必要なスキルは「営業スキル」と「マネジメントスキル」、そして「数字管理」です。
まず「営業スキル」について。採用企業は人材紹介会社に対して「自社のPR」をしなくてはなりません。営業活動と同様に“競合サービス”よりも“自社のサービス”を売り出さなくてはならないのです。
この時、人材紹介会社を動かすには、「なぜ自社が良いのか」、という部分を追求する癖がついている人材が適任です。打ち合わせの際、紹介会社から多数の「なぜ」という質問をされます。社内で、日々感じている「なぜ」という部分を常に追求できている(能力を持ち合わせている)人材ほど人事に適任だと言えます。
次に、「マネジメントスキル」も必要です。数十社の紹介会社を利用する際に、各紹介会社のモチベーション管理も必要でしょうし、相手に合わせたコミュニケーションも必要です。もし、これまで各社一様に接して結果が出ていないという人事の方は、紹介会社を「使う」というよりは「マネジメントする」という認識で仕事をすることでこれまでとは異なった景色が見えてくるのではと思います。
最後に、何より重要なのは応募数、面接数、応募通過率などを算出する「数字管理」の能力です。応募数などについて1週間ごとの数字を取りまとめていない採用企業は、採用活動がうまくいかないケースがほとんどです。各紹介会社からの応募数や面接数などを1週間ごとに取りまとめておきましょう。
そして、その結果のフィードバックを紹介会社にすることです。紹介会社に改善や要望があっても、その数字がなくては説得力がありません。しっかりとしたフィードバックをすることが、ひいては紹介される求人の質の向上につながっていくのです。
最後に
私は10年弱、人材紹介会社で営業、カウンセリング、求職者集客の業務を行ってまいりました。
紹介会社の商材となるのは「人材」。日本で唯一、“商材に「感情」がある”のです。その感情をマネジメントしながら採用企業へ紹介をするのは、まずまず大変なことです。
夜10時に求職者から電話がくることもありますし、面接前日に「面接に行きたくありません」と言われることもあるのです。そういった壁を突破しながら採用企業に紹介をしているという背景もありますので、まずは採用活動をしていらっしゃる皆様には紹介会社の事情を理解していただいた上で、発注をしてくださると幸いです。
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